やはり、人よのう。 増左衛門は軒先をみつめながらつぶやいた。 「殿と話してみてよかったわ、広右衛門」 広右衛門は全てそのとおりだといった風情で頷き返す。 「己も、己の行き方も、世も、人がつくるのだのう」 大事じゃ、殿ともっと話とうなったわ、と歩いていく頃には、増左衛門の体からは少し力が抜けているように、広右衛門にはおもえた。 暮れていく中、庭には、桔梗が凛とした青さを浮かび上がらせていた。