いやあ、久しぶりに「大作読んだ!」って感じだった。読み終わった後、名作を読んだときだけわき起こるあの創作意欲が出てきたもんな。
全体を通してすごく好印象だったのは、登場人物達のクセみたいのをうまく付けていて、歴史の教科書では一文ですまされるところを、ギャグなりでぐんぐんふくらませて人間くささを感じさせていた部分。
振り返ると龍馬にはそういう部分が余り無かった気がするけど、脇役達が愛らしすぎる。
大久保利通はくまさんを折り紙で作ってて、龍馬につぶされて怒ったりしてるし(笑)、桂小五郎はなんで自分だけ長州仲間からいびられて高杉晋作は人気があるんだとかブチブチ文句言ってるし、その晋作は薩長会談に「朝顔が綺麗に咲いていたので持ってきた」とかステキすぎる。
一方龍馬は少年期、青年期、成熟期とかなりキャラクターが分かれている印象で、成熟期の龍馬は愛嬌があまりなくなって頭が切れすぎてあまり好きじゃなかったな。
でもその成熟期に彼の功績の全てが詰まってるんだよね。
だから立志伝としてはちょっと弱くて、スロースターター。
通して読んでみて、あら、龍馬って案外最後以外何もしてないのね、と(^^;
歴史物だけど、龍馬が上海に行ったりして、「これって本当に史実なの?」と疑問を抱いてしまわせる辺りが少しもったいなかった。
でもその空想力というのかな、それがないとこの作品は成立していなかったんだろうから、難しいところだなあ。
龍馬が将軍に謁見するなんて件は絵空事と思いつつも引き込まれてしまったし。
しかしこれ、武田鉄矢が原作全部やったのかな? そうだとしたら相当の手腕の持ち主! と敬服する。
一点自分の中で汚点となったのが、武市半平太。
カリスマ性がなさすぎて嫌いになってしまった。
女郎屋で行為の前に昇天する武市半平太のイメージが強すぎて、なんでこの男が頭目になってんの? と感情が納得できなかった。
ギャグキャラにさせすぎでしょ(笑)。
あれを敬っていた中岡や那須やらがかわいそうだった(^^;
まぁ、ともかく大作ですよ(笑)。
読んで損なし、『龍馬伝』より面白いと思った。