›8 21, 2004

向田邦子『阿修羅のごとく』★★★☆☆

阿修羅のごとく
 ここ1年ぐらい、自分の中で仏教が注目度No.1といった様相を呈してきているのですが、そんな中でも最近は「阿修羅」に興味津々です。

 「阿修羅」という単語で検索すると、関係書籍は驚くほど少ないのですが、そんな中であっちにもこっちのも名前が出てくる向田邦子さんの『阿修羅のごとく』。こいつを読んでみました。
 私は阿修羅という人間像に興味があったのであって、それをモチーフとした物にはそれほど興味がなかったのですが、こういうしっかりとしたホームドラマを体感するきっかけとして、良かったと思います。

 ただ、不満足だったのが、「阿修羅」と言うほど壮絶な人間関係があったのではなかったということです。
 『阿修羅のごとく』を読んで一番感じたいと思ったのが、そこをどう落とし込むのかという点だったので、「阿修羅」と言っても「4人姉妹だったらそれぐらいの軋轢ぐらい生まれるわな」という程度の関係でしかなかったのは期待外れだったのです。

 しかし、やはり軸となる人間の「位置」というものが非常にしっかりと書き込まれていて、登場人物一人びとりのかたちを確かに感ずることができ、感情移入もできました。

 また、脚本という形態の作品を初めて読んだのも面白い体験でした。
 簡潔に描かれた描写を補完するのに大なのは読者の想像力であり、小説より面白い部分もあると共に、その余白をいかに映像化するか、というドラマ製作の仕事にも興味が湧きました。
 機会があれば、映像化されたものを観てみたいと思います。

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